かっこいい匠たちvol.2
日本建築と西洋建築の技術融合で、愛着を持って長く暮らす住まいづくりを目指したい
大工の仕事を始めて12年。妻は建築士、二人三脚で設計からデザイン提案、施工を手掛けている。
“日本建築技術は自分の技術のベース”
大工の基本は、静岡県内の建設会社で学んだ。大工作業から監督の仕事など幅広くできるようになった。「最初に日本の建築技術を学んだことは良かったと思います。お寺の鐘楼(しょうろう)工事のときは日本建築技術を深く学びました。刃物の研ぎ方、丸い柱の削り方、丸く柱を削るためにカンナの刃を合わせたり、彫刻があったり、現在の建築には使われていない技術も多く、ひとつひとつの作業が大変でしたがとても勉強になりました。完成したときには、ずっと残るものを作ったという達成感と感動もありました。」日本建築のきっちり正確な施工、段取りよく、道具にもこだわる。技、道具、所作も含めて、現在の大工仕事の基本となっている。
“人の感性を大切に、手をかけながら長く家に住む文化を”
その後ヨーロッパ風建築をメインにした会社に転職。「曲線の美、人の感性をデザインに取り入れた、人のフィーリングをデザインで表現する楽しさを知りました。」と自由な発想で設計・施工する西洋建築は新鮮だったと言う。また日本とヨーロッパの住宅市場の違いも感じるようになった。「日本では新築のときに一番価値があり、その後は下がってしまう。リフォームをしながら家を大事に暮らす、家の価値もあげるヨーロッパのリノベーション文化はとても良いと思っています。昔から日本も畳の貼り替えや家を直しながら家を引き継いでいく文化がありました。最近ではリフォームする人も増えてきたので、そのお手伝いもしていきたいと思っています。」と語る
“仕事は楽しくがモットー、嫌な仕事もポジティブに変換”
日本建築、ヨーロッパ建築を学んだ後に独立。「今は仕事中心の生活でほとんど休みもありませんがとても楽しいです。自分で仕事を受けて、自分が決めて動いているので、自分自身がステップアップをしていると感じます。以前に増して責任感もあります。」自分で仕事をコントロールすることで、おのずとポジティブな意識になっている。「仕事はとにかく楽しんでやることにしています。大工の仕事は大変なこともたくさんありますが、今はもう自分でやるしかありません。特に解体作業は大変で、汗でびしょびしょ、汚くなるし、体力も消耗しとても疲れます。そんなときには『これは筋トレになる』と見方を変えます。自分のためになるなら楽しくなりますよね。」意識的に視点を変えることでポジティブな気持ちに変換している。仕事の内容もより良くなっていることだろう。
“日本建築技術をベースに人の好みや感性をデザインで表現する、新しいジャンルをつくりたい”
ヨーロッパ建築が好きで、5月には久しぶりにまとめて休みをとってフランス建築めぐりへ。「これからはもっと外に出ていろいろな建築を見たいです。特に西洋建築は歴史も感じ、その当時の作り方を想像するのも楽しいです。」また自身の仕事とプライベートの経験を活かすことも考えている。「今後は日本建築と西洋建築のコラボジャンルができたらいいなと思っています。日本の風土にあった素材や技術を生かしながら、住む人の好みや感性に合ったデザインで家に愛着を持って、長く大事に暮らすお手伝いをしていきたいです。」デザイン提案時には図面だけでなく、水彩画で家のイメージを描いてデザインを伝えたり、建築士の奥さまと夫婦で協力しながら、夢の実現に向かって歩き出している。
《スタッフの一言》
夢は大きく!できることから一歩ずつと建築技術・デザインの融合の新しいジャンルへ進んでいるようですね。小粋な匠たちでも、「長く住みながら価値ある住まいをつくる文化」を広げるお手伝いもしていきたいと思います。