かっこいい匠たちvol.4

「技術」と「仲間」が仕事を広げる

 

工場、会社・住宅の屋根・雨どいなどの板金工事を手掛ける。最近では豪雨・台風の影響で屋根の板金や外装工事・リフォームの依頼が増えている。

 

“良いものをつくりたい、強い想いで独立”

もともとはボート選手になりたかったが、能力適正が合わず断念。友人が勤めていた板金会社に就職した。住宅関係の板金技術を学んだ後、野丁場(ゼネコンなどの大きな現場)を手がける会社でも働き、その後独立。

「自分で考える『ものづくり』がしたかったんです。板金工事って、実は設計次第でずいぶん変わる。工事だけを依頼された案件の中には、作る過程で雨仕舞い(雨水侵入を防ぐための施工)が悪く雨水が漏れる可能性があると気づき、直したものもありました。でも、最初から自分で設計すれば、しっかり納得したものが作れる。予算に応じて条件を考慮し、納期や価格も調整できます。仕事の流れも良くなると思いました。責任はもちろん倍増しましたが、お客さんのために自分が良いと思ったことをカタチにしている方が断然楽しいです。」できるだけ制限せずに良いものを作る、と決めている。顧客のために良いものを作ることが職人のプライドだと考えるからだ。顧客の納得感と信頼はそんなところから生まれている。

 

“『黒子』だからこそ、信頼できる仲間との仕事がスキルアップに”

「板金屋は黒子みたいなものです。建物の一部とは言え、大切な部分をしっかり作る仕事です。ただ、正直言うと、仕事の価値を知っている板金屋、職人は減ってきています。だからこそ、技術がわかる職人と仕事をするのは楽しいです。『こんなことやるの?』と驚くような新しい仕事を依頼されたり、きちんと話せる仲間とチャレンジしたりするような仕事はやりがいがありますね。お寺で大工の技を見るのも楽しい。技術がある人を見ると、もっと自分もやってみよう、と思います。」技術の価値を知る人が、自分を理解して依頼してくれる。そうした仕事相手からモチベーションをもらい、技術もさらに深化していく。仕事も技術も、自分だけでなく、仲間が広げてくれているという感謝の気持ちが伝わってきた。

 

 

“やっぱり基本は技術”

最近では和風建築も少なくなり、必要な板金技術も変化している。「打ち出し板金(金属の薄板をハンマーで叩いて複雑な立体形状をつくる板金加工技術)など、難しい技術を要する建築が少なくなっているので、できる人も減っています。板金屋はカタチを想像しながら、平面で図面を書いて、金属を切ったり、折り紙のように曲げたり、つなげたりすることで、平らな金属からカタチをつくる職人。技術の基本は受け継いでいくべきだと思っています。」

時間があるときには、余ったトタンで「ちりとり」や「じょうろ』も作る。顧客にプレゼントすると、とても喜ばれるそうだ。以前はこうした道具を作るのも、若手の技術訓練のひとつだった。この「ちりとり」は、ガルバリウム鋼板で錆びないし、取っ手部に支柱があるので曲がらない。ゴミもしっかりとれる。本人は、「こんなのは売りものではない。喜んでもらうために作るだけ」と言うが、充分商品になるクオリティだった。

 

 


《スタッフの一言》

雨漏りする家には住めない。板金屋さんは建築界の「黒子」、でも、人の生活には大切な仕事ということがよくわかりました。信頼できる匠が作った使いやすく丈夫な『ちりとり』、欲しいという人もいるのでは?

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