かっこいい匠たちvol.8
伝えていく技術と新しい挑戦
新築・リフォームの左官業、左官技能競技大会 優勝経験もあり、現在は漆喰や特殊塗装などの化粧面仕上げを中心に仕事を広げている。
“左官職人、プロの仕事とは”
「左官」は、建物の壁や天井、床などを塗り上げる専門職。その領域は広く、下地、基礎の塗装から化粧面・表面仕上げなどの意匠を作る特殊塗装もある。「昔から日本建築に興味がありました。藤枝にも良い職人さんがたくさんいましたし。手に職をつけたいと思い、IT関係の仕事をしていましたが、21年前に左官の世界に入りました。ITも左官も自分にとっては同じ『手に職をつける』仕事。左官職人が減っていて、専門職としてやっていきたいという思いがあり8年前に独立しました。」「左官は液体を『塗る』仕事。プロと素人の違いは、いかに耐久性が保つ接着層ができるかどうかです。壁や床や天井は数十年単位で使うものなので、その年月に耐えられる接着力が必要です。様々な液体材料がある中で、左官工学、接着技術の知識と経験が一番重要です。日本は春夏秋冬、温度・湿度変化がある気候で、最近の住宅は高気密性・高断熱なので、湿気やカビの問題も多くなっています。材料、配合、重ね方によって、耐久性が大きく変わります。最近ではアレルギー対策や湿気をとる壁材など、様々な材料が開発されていますが、安定してくっつくように材料を考えて塗るのは、左官の知識と経験がないとできません。」日本の気候、住宅性能や人が抱える問題を解決し、長く使えるものをつくることがプロ技とも言える。
“仕事の楽しさは新しい挑戦”
「新しい意匠、材料や塗り方を自分で考えて、自分で提案して、自分で仕上げられることが、この仕事で一番面白いと思います。例えば、飾り棚棚の意匠面で、モルタル素材に水彩画のように特殊なステインをしみ込ませながらペイントして石調の意匠にしたり、イタリアンレストランの床では、自分で塗り方や素材も工夫したことも面白かったです。床は耐久性に加えて強度も必要で難しいんです。自分の提案した難しい仕事を、お客さんに喜んでもらうことが楽しいと思います。新しいことを達成すると、また新しい挑戦したくなります。これからも挑戦を続けていくと思います。」
“現代の家での『漆喰』”
「最近では自然素材を取扱うことも多くなっています。「漆喰」は一番おススメの壁材です。昔からお城やお寺、武家屋敷などに使われていました。耐久性があり、湿度調整、抗菌作用、消臭、防火性、防音性に優れているという特徴があります。最近の高気密・高断熱の家でも、漆喰の壁は壁紙よりもカビがはえにくく、防火性もあるのでキッチンにも安心して使えます。また音を乱反射させ反響しないため比較的静かでクリアに聞こるので、音楽に関わる人からの依頼もあります。」現代の家でも漆喰の機能が活かされ、壁紙のような定期的な貼り替えもないので、長い目で考えるとコスパも良いとも言えるだろう。
“新しさと伝えていく技術”
「親方や兄弟子から教えてもらったことを大切にしています。左官の仕事には、昔から伝えられている基本があります。新しい材料は次々と開発されていますが、左官技術の基本、接着工学の基本は変わりません。様々な新しい材料、様々な情報を取れるようになっている現代では、確実に効率性はあがっています。また、漆喰や聚楽(じゅらく)、わび・さび文化は日本にしかないものです。SNSも活用されるようになって、日本の美も注目され、美意識は多様になっています。今後は、日本の文化を広げていくことや、新しい材料・技術も取り入れながら、左官の伝統・基本的な知識を伝えいきたいと思います。
《スタッフの一言》
日本の気候の中で、暮らしやすさを家に吹きこんでくれるのが職人さん。伝統を引き継いで、新しいチャレンジすることで、現代の多様性にマッチさせられることが「プロ」なのだと思いました。