かっこいい匠たちvol.10

“『つくる』原動力は『人』”

新築、リフォームやリノベーションを手掛ける大工さん。家具や建具、木材の生活雑貨も制作する。「木」と触れ合うイベントや講師活動もしている。

 

 

“仕事のこだわりは、お客さんの理想を『つくる』こと”

福島県出身で、最初の仕事はアパレルサービス業。静岡出身の奥さまとの結婚を機に静岡に来て大工になった。「実家が農家で、祖父は木が好きで材木集めをしていたり、『つくる』ことが身近だったからか、大工の仕事を選んだのも自然でした。当初はハウスメーカーさんや工務店さんの仕事をする会社に勤めて、30歳のときに独立しました。建てる側の都合ではなく、お客さんの理想に近づける家を作りたかったんです。ご要望に応じて、自分ができることを自分で考えて提案して作りたいと思いました。」

「異業種からの転職経歴からか、自由度があるタイプと思います。こうでなければならない、という捉え方をあまりしないので。新しいことに取り込んでいくのも好きです。気に入ったら床材を壁に貼ってもいいし。たぶんジーンズで仕事している大工なんてあまりいないと思いますね。とは言え、長く使う家だからこそ、大工の知識と技術、丁寧な仕事が大事だと思います。年数が経つと木も動くので、材料の選定や性質、設置場所、意匠なども長い目で考えることも大切です。大工の知識と技術とアイデアが、顧客の理想を『つくる』を支えている。

 

 

“好きなものと長く暮らす楽しみの提供”

「家に合わせてテーブルやベンチなどの家具や生活雑貨も作っています。新築やリノベーションはお客さんのハードルも高いので、家具や雑貨を通して、お客さんの好きなものが作れて使える楽しさを伝えられたらいいなと思っています。」


「現在制作中のテーブルは、『朴(ほうのき)』という木で、木材から探しました。加工性が良く、乾燥しても曲がりの少ない木なので長く使うものにも適しています。くすんだグリーンとグレーの色変化がある綺麗な柾目、マットな艶の仕上がりにすることで木の風合いも楽しめます。」


「たくさんの人に木と触れ合ってほしいという気持ちもあるので、去年はラグビーワールドカップのイベントで、静岡空港で庭の展示のお手伝いをしたり、アイセルのアースカレッジで家族向けの木組みの講師もしています。」自然の素材に囲まれた生活をより身近に感じてもらう活動もしている。


「2年前に築150年の古民家リノベーションを手掛けました。内装全体をスケルトンにして大々的に改装する仕事でした。お客さん自身もこの家に思い入れがあったので、それに応えたいと思いました。お客さんご自身で建具をネットで買ってきたので設置方法を考えたり、外側はアルミサッシにしたくないという要望があったり。キッチンも既製品では内装の雰囲気に浮いてしまうので自分で作りました。家に合わせて玄関のポストも作りました。自分でも、お客さんのご希望をカタチにできた仕事だと思います。施工後もお客さんと良い関係が続いていて、今は塀の加工やテーブルを作っています。」


「古民家リノベーションは自分でも楽しいと思える仕事です。新しいものに変えてしまうのは簡単ですが、古いものを活かしつつ、新しいものも取り入れて丁寧に作りたいと思いました。柱は全て手で削りました。見た目ではわかりにくいですが、手で削った木の表面は、艶や肌触りも良く、撥水性や耐水性も優れて湿気にも強くなります。木のつなぎ目には工業製品を使わないことも考慮しました。木は生きています。住みながら経年変化も楽しんでもらうように、木を活かす工夫をしました。」お客さんのこだわりをカタチにする仕事、長く楽しく暮らしてもらうために手間をかけることが関根さんのこだわりである。

休みの日は、家族と過ごしたり、都内まで買い物に行ったりもしますが、廃材で木の生活雑貨を考えたり作ったりしています。雑貨作りは趣味の延長なのかもしれませんが。こんなものがほしいというのがあれば作りますよ。」

 

 


“人のご縁で良い仕事が生まれる”

「社名は『縁』です。人のつながりを一番大事にしているので屋号にしました。仕事をこなすことは誰でもできる当たり前のことですが、対『人』で捉えないと良い仕事は生まれません。何かしらの『ご縁』があって仕事を頂いて、ひとつひとつの『ご縁』、ひとつひとつの仕事にこだわることで良いものができます。自分自身の思い入れも強くなるので、その気持ちのままお客さんにお渡ししたいと思っています。その積み重ねで、『自分にやってほしい』と思ってくれる人が1人でも増えたら嬉しいです。自分は『つくる』ことしかできないので、今後はいろんな業種の方々とつながって、衣食住のライフスタイル提案やコラボ企画などのイベントなどで、木と共に暮らす楽しみを伝えていけたらいいなと思っています。」

 


 

《スタッフの一言》

モノづくりの核はそれを使う『人』。目の前の『人』の要望にこだわるからこそ、モノづくりにもこだわることができ、良いものができる。人のご縁が生み出す良い循環を大切にしていきたいと思いました。

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