かっこいい匠たちvol.13
知識と経験の積み重ねで「プロ」になる
住宅・建物のシロアリ駆除、飲食店などのねずみ・ゴキブリ駆除、その他ノミ、ダニ、ムカデ、お庭の毛虫など、害獣・害虫に関するお悩みを解決している。
知識と経験を積み重ね対応力を広げることで、この道の「プロ」として信頼されるようになった
害虫駆除歴25年。シロアリ駆除専門の会社で10年、独立のための勉強としてねずみ・ゴキブリ・ハトなどの害虫駆除専門の会社で5年勤務した後に独立。働き始めたころはこの仕事を受け留めることが難しかったと言う。「世の中にこんな仕事があるんだと思いました。駆除の仕事は生き物を殺生する仕事。できない人は一日で辞めてしまいます。当時は積極的にはなれませんでしたが仕事として続けることにしました。」
仕事への意欲が変化したのは「プロ」意識が芽生えたから。「経験を重ねるにつれ、自分がこの道の「プロ」だということを自覚するようになりました。虫や動物は人間が考えている以上のことをします。ほんの小さな穴があると通り抜けてしまったり、家にシロアリの形跡があっても家の中に巣がないこともあったり。単純に薬を撒けば良いというものではありません。お客さまから害虫の相談されたときに、虫の生態や解決策を知らないというのは「プロ」ではないと思ったのです。虫や動物に関してはめちゃくちゃ勉強しました。写真を見ただけで何の虫か認識し、どのような生態でどのような習性がありどのようなことが起こりうるのかを想定しないといけない。住宅工務店さんから虫に関して問い合わせだけのときもあり、お金にならない仕事も増えています(笑)。同時にお客さまや工務店さんからも「プロ」として頼られていると思いますし、日々のコミュニケーションを通して仕事にもつながっていると思います。」
一番大切なことはお客さまの満足度を上げること
「お客さまが喜んでくれるならできるだけの対応をしたいと思っています。できるだけ建物のダメージを少なくするようにも心がけています。例えばシロアリ駆除の作業では家に穴をあけるときもあるので、市販の道具をそのまま使うのでなくスプレーの先を手作りで制作して、家に空ける穴はできるだけ小さくするように工夫したりもしています。」
お客さまには正しい知識を持って選択してもらいたい
最近ではネットなどでいろいろな情報が出ていたり、害虫対策の家庭用商品やサービスも増えており、何が正しいのか判断が難しくなっている。「例えば軒下や窓にかける『虫コナーズ』は大ヒットしていますが、成分は川辺にいるユスリカ(ハエの一種で吸血しない)に効くもので、人に吸血する藪蚊:ヒトスジシマカアカ、イエカ、チカイエカ蚊には効かないことを知らないで使われている方が多いんです。」
コロナ禍で多くの『除菌』『抗菌』『アルコール消毒』の商品が出ているが、言葉のイメージや意味を拡張した商品も多いと言う。「『滅菌』は煮沸消毒などで菌を無くすこと、『殺菌』は菌を殺すことで消毒して概ね減らすことで、両方共菌が無くなることを意味します。しかし、「除菌」は菌を取り除いた箇所があれば菌が残っていても「除菌」と言いますし、「抗菌」は菌を増やさない・寄せ付けないことで死滅させるものではありません。「アルコール消毒」は、アルコールの気化と同時に菌も気化して飛ばすことを意味します。アルコール消毒で菌を死滅させるのではないのです。」
「シロアリ屋はサービスの内容や価格も様々でお客さまもわからないことが非常に多いと思います。自分のところに相談に来てくれればいいのに・・・ということは多々あります。シロアリ対策の薬の基準は決まっているので、本来種類や価格差は少ないのですが、薬によって大幅に価格が変わる業者もいます。うちは行政の基準と効果に沿った内容で価格が低いので本当に大丈夫か心配はされますが(笑)。人に安全できちんと対処できる薬を使って価格も適正で対応しています。」
「シロアリ自体に関してはもっと理解されていないと思います。シロアリは家シロアリ、大和シロアリの2種類があります。沿岸部の建物では、4月後半から5月初めに羽アリを見たら家シロアリに要注意。通常の建物・住宅では6月中旬から7月中旬の湿気が多くなってくるころに羽アリを見たら大和シロアリに要注意です。静岡市の沿岸部には家シロアリが発生しやすく、一度に200~300万匹も生育し、鉄筋の建物でも冊子のゴムパッキンを辿って水分を運びながら建物内の木を食べてしまいます。建物内にシロアリの巣がなく、他の場所に巣がある場合もあります。建物に薬を散布してもシロアリが減らない場合は屋外で巣を探す必要があるのでとてもやっかいです。一方、大和シロアリが発生する場合は、濡れた木しか食べないので、水漏れ、雨漏れがある場所に生息します。一度に20万匹程度で、建物内に薬を散布すれば治まるケースは多いです。」どれだけの人がこのようなことを理解して商品やサービスを使っているだろうか。意味を理解すれば商品・サービスの選択や使い方も変わるかもしれない。
仕事の精度を上げるために害獣・害虫の研究をしていきたい
「今後もできるだけ少ない薬剤でより大きな効果が得られるように研究していきたいと思っています。駆除の薬自体は確実に効くものですが、的確な場所に的確な量を散布することは非常に難しいんです。虫がいないところに撒いても意味がない。いるであろう来るであろう場所を想定して精度を上げることが重要です。そのためにも害虫・動物の生態を知ることが重要で試す経験を積み上げることが重要と思っています。」
〈スタッフから一言〉
害獣・害虫駆除は大変なお仕事ですが、「プロ」の方が対処してくれるからこそ、私たちが安心して暮らせるようになるのだとつくづく思いました。情報過多の世の中で正しい情報を得て商品・サービスを見極めていくことも大切ですね。